トランスの低背化におけるポイント
トランスは、サーバー用電源や半導体制御装置など出力電力量が大きくなるほどサイズは大きくなります。しかしながら、昨今では電子機器類の急速な進化に伴い、小型化が求められるケースが非常に多いです。
このような場面で、トランスの低背化を実現することができれば、求められる高さ方向のサイズの制約をクリアすることができます。さらに、トランスの低背化により、表面積が広がることで放熱性能の向上も期待することができます。
当記事では、トランスの低背化における当社の取り組みについてご紹介します。ぜひご覧ください。
ポイント①:トランスの分割
例えば、求められる要件にクリアするトランスだと、高さ方向の制約がクリアできないケースがあります。このようなケースでは、1つのトランスを2つや3つに分割することで低背化を実現できます。ただし、トランスを複数使用することになるため、トランス費用は高価になる傾向がありますので注意が必要です。
ポイント②:プレーナー型構造を用いた小型コイルの活用
プレーナー型構造を用いた小型トランスは、高周波での使用やスペースが限られている場合に適したトランスで、基本的な動作原理は他のトランスと同様ですが、構造が大きく異なります。
プレーナー型の小型トランスは、基板コイルや薄い銅板、コア、絶縁テープといった部品から成り立っています。この構造により、銅板の表面積が広くなるため、同じ電流を扱う一般的なトランスと比べて、全体の厚みやサイズを抑えることができます。
ポイント③:コア・ボビンのカスタム
当社はトランスのコア・ボビンの金型を設計できるため、仕様や回路などの条件に応じてコア・ボビンを柔軟にカスタムできることから、トランスの小型化・低背化が可能です。
コアやボビンをカスタムする際のポイントとして、発熱を前提に、効率よく放熱できる構造を設計することが重要です。また、コアに使用される材質の選定も重要になります。
当社のトランスの低背化設計事例のご紹介
大電流用プレーナー型チョークコイル

こちらはプレーナー型チョークコイルの開発事例です。車載用途向けで、限られたスペース内での設置が必要なため、低背化構造を採用しました。この設計により、コアの面積が広がり、底面(筐体)との接触面積が増加して、放熱性を向上させることが可能となっています。さらに、ハーネスをねじ止めすることで、大電流に対する耐久性が強化されています。
まとめ
今回は、トランスの低背化における当社のポイントについてご紹介しました。電源開発・設計ソリューションを運営するペック株式会社では、トランスの低背化の設計提案や製造事例の実績が多くございます。トランスの設計・製造にお困りの方はお気軽にお問い合わせください。
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