トランス・コイルのコア材の種類と選定について
磁性体粉末材料と一般的なコア名称について
次に示す材料名と一般的なコア名称との完全な一致を示すものではないため、コア名称を基にした場合、源材料は、多岐に渡ります。※特性や性質により、原材料を使い分けて製作されています。
球状合金軟磁性粉末A
特徴としては、高い磁気飽和、により大きな電流を流すことが可能です。
粉末は、低圧および高密度成形の特性を持っており、高抵抗率、低保磁力、低損失となります。
一般的なコア名称としては、『センダスト(Sendust Cores)』、『鉄シリ(Si-Fe Cores)』、
『鉄シリニッケル(Neu Flux Cores)』に使用されています。
球状合金軟磁性粉末B
特徴としては、粉末の粒度が小さく、総合的にコストメリットが大きい材料となります。
粉末は高い透過性と高い磁気飽和特性を持っており、良好な成形性、高い製品強度を保有します。
一般的なコア名称としては、『センダスト(Sendust Cores)』、『鉄シリ(Si-Fe Cores)』、
『鉄シリニッケル(Neu Flux Cores)』に使用されています。
低損失軟磁性粉末特
徴としては、高信頼性、優れた磁気飽和特性、低損失で良好な高周波特性を保有します。
一般的なコア名称としては、『鉄シリニッケル(Neu Flux Cores)』、『ハイフラクス(High Flux
Cores)』、『パーマロイ(MPP Cores)』に使用されています。
シート合金軟磁性粉末
特徴としては、高純度で滑らかな表面、狭い粒度分布、幅と厚さの比率が大きく、低保磁力と
なります。
アモルファス粉末
特徴としては、高い信頼性、大電流に適した良好な飽和特性を持つ材料であり、低保磁力、高抵抗、
低損失となります。
ナノ結晶粉末
特徴としては、粉末はナノ結晶状態にあり、アモルファス粉末同様に、高い信頼性、大電流に適した良好
な飽和特性を持つ材料であり、低保磁力、高抵抗、低損失となります。
合金鋼粉末
特徴としては、鉄を主成分とする金属粉末コアであり良好な球面密度と良好な流動性、均質な組成、
偏析がなく、低酸化と高純度にあります。合金鋼粉末材は、永久強磁性材料や軟質強磁性体にも使用されている可能性があります。また、合金鋼粉末と言っても様々な種類があり、特性も幅広いため、コアメーカーに原材料を確認する必要があります。※一般的なコア名称での補足
センダスト(Sendust Cores)
センダストは鉄(Fe)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)の合金粉末を主成分としており、
比較的高い飽和磁束密度を持ち、中周波域で低損失な特性があります。
鉄シリ(Si-Fe Cores)
鉄シリは鉄とシリコンの合金粉末で、センダスト系と同様に飽和磁束密度が高く、比較的低
コストとなります。
鉄シリニッケル(Neu Flux Cores)
鉄シリニッケルは鉄、シリコン、ニッケルの合金で、鉄シリ系よりもさらに高周波
特性と安定性に優れています。
ハイフラクス(High Flux Cores)
ハイフラクスは鉄ニッケル合金(パーマロイに近い組成)の粉末を主成分とし、
高い飽和磁束密度と低いコア損失が特徴です。高周波域での使用に適しています。
パーマロイ(MPP Cores)
パーマロイはニッケルと鉄の合金で、非常に高い透磁率と低いコア損失を持ちます。
ただし、飽和磁束密度は比較的低めです。注)ハイフラックス(High Flux Cores)とパーマロイ(MPP Cores)は、どちらもニッケル含有量の多い合金粉末を使用しますが、組成や製造方法によって特性が異なります。原材料としては、「低損失軟磁性粉末」にどちらも該当する可能性がある一方で、異なる特性を持つ可能性もあります。
アプリケーションに最適な材料選定について
それぞれのアプリケーションに最適な材料を選定するためには、磁性体特性、機械特性、コストなどを考慮した上で複数の材料の中から最適なものを選択する必要があります。
800V急速充電昇圧インダクタ、ハイブリッド用昇圧インダクタ(動作周波数:5KHz~15KHz)
合金鋼粉末、または特性によっては球状合金軟磁性粉末A/Bが候補となる可能性が高くなります。
太陽光インバーター用インダクタ、PFC用インダクタ、ハイブリッド用昇圧インダクタ(動作周波数:15KHz~50KHz)
球状合金軟磁性粉末A/Bが有力な候補となります。
太陽光インバーター用インダクタ、サーバー用電源PFCインダクタ(動作周波数:20KHz~100KHz)
球状合金軟磁性粉末A/Bが有力な候補となります。
FCV空気圧駆動インバーター用インダクタ、サーバー用電源PFCインダクタ(動作周波数:5KHz~120KHz)
幅広い周波数に対応する必要があるため、球状合金軟磁性粉末A/Bに加えて、特性によっては低損失軟磁性粉末も検討する場合もあります。
昇圧用インダクタ、PFC用インダクタ(動作周波数:50KHz~200KHz)
低損失軟磁性粉末が有力な候補となります。
臨界モードPFC用インダクタ(動作周波数:150KHz~500KHz)
低損失軟磁性粉末が適していると考えられます。
LLC共振インダクタ、励磁インダクタ(動作周波数:500KHz~2MHz)
低損失軟磁性粉末、またはアモルファス粉末、ナノ結晶粉末が候補となります。
【参考例】
具体的な各材料の周波数特性については、公開情報が限られているため、正確な情報を得ることは難しいです。
しかし、一般的な磁性体材料の傾向から、以下のように推測できます。
・球状合金軟磁性粉末A/B: 低周波~中周波領域 (数kHz~数百kHz)
・低損失軟磁性粉末: 中周波~高周波領域 (数十kHz~数MHz)
・シート合金軟磁性粉末: 広帯域 (kHz~MHz帯域)
・アモルファス粉末: 中周波~高周波領域 (数十kHz~数MHz)
・ナノ結晶粉末: 中周波~高周波領域 (数十kHz~数MHz)
・合金鋼粉末: 低周波領域 (数kHz~数十kHz)
最後に
弊社は、中国の協力工場を通じて数社の材料メーカーへコンタクト可能であり、お客様の仕様(アプリケーション等)から何の材料が適しているのかを考えて、各材料メーカーからの情報の中から最適解を導き出し、製品の高性能化、高信頼性化に貢献したく考えております。昨今の磁性体材料においては、中国メーカーの方が先行している部分もあり中国メーカー抜きでは、コイル・トランス類におい
ては、非常に難しい状況にあります。また、各材料・コアメーカーや弊社の協力工場(中国)もリスクヘッジも含め対応を考えております。
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