チョークコイルとは?その特徴とメリットについて解説
チョークコイルとは、主に直流や低周波交流回路において、特定の周波数範囲の信号をブロックまたはフィルタリングするために使用されるインダクタンス部品の一種です。
具体的には、コイル状にまかれた導線が磁場を形成し、電流の急激な変化や高周波ノイズを阻止します。チョークコイルは電源回路や通信機器でよく利用され、ノイズ除去や信号の安定性向上に寄与します。
チョークコイルの特徴・役割
①インダクタンスの特性
チョークコイルはインダクタとして機能し、電流の変化に対して抵抗を示します。
インダクタンスが高いほど、電流の変化(特に高周波信号)に対する抵抗が大きくなるため高周波信号を効果的に抑制し、ノイズをフィルタリングします。
② 低い直流抵抗(DCR)
チョークコイルは直流電流に対して非常に低い抵抗を持っています。
これにより、直流電流が流れる際のエネルギー損失を最小限に抑えることができます。直流抵抗が低いほど、電力のロスが少なくなり、効率的なエネルギー供給が可能となります。
特に、電源回路やモーター制御回路などでは、この低直流抵抗が重要な役割を果たし、回路全体の効率を向上させます。
③周波数依存のインピーダンス
チョークコイルのインピーダンス(抵抗値)は周波数に依存します。
低い周波数ではインピーダンスが低く、高い周波数ではインピーダンスが高くなるため、チョークコイルは特定の周波数成分を効果的に抑制できます。
これにより、高周波成分をフィルタリングし、低周波成分のみを通すことが可能です。
この特性は、ノイズフィルタや通信機器などで活用され、不要な高周波ノイズを除去して、信号の品質を保ちます。
④磁気飽和
チョークコイルは、磁気飽和という現象に注意を払う必要があります。
コア材料(鉄芯やフェライトなど)は、一定量以上の電流が流れると磁気飽和に達し、インダクタンスが急激に低下します。これにより、コイルのノイズ除去や電流制御の能力が大幅に低下するため、設計上、飽和点に達しないように直流重畳特性のグラフを確認することで、インダクタンスが急激に低下する前に活用され、効果を発揮します。
チョークコイルの種類・型について
コモンモードチョークコイル
コモンモードチョークコイルは、同じ方向に流れる信号やノイズ(コモンモードノイズ)を抑えるために使用されるチョークコイルです。
特に電源回路や通信回路で、ノイズがデータラインや電力ラインを介して伝わるのを防ぐために利用されます。
コモンモードチョークコイルは、2つの巻線を持つ構造で、信号電流には影響を与えずに、ノイズを効率的に除去します。
ディファレンシャルモードチョークコイル
ディファレンシャルモードチョークコイルは、2つの異なる方向に流れる信号電流のノイズ(ディファレンシャルモードノイズ)を除去するために使われます。
このコイルは、2本の巻線に逆向きの電流を流すことにより、信号そのものを妨げることなくノイズだけを効果的に取り除きます。
ノーマルモード(パワーライン)チョークコイル
パワーラインチョークコイルは、電力供給回路で使用され、特に高周波ノイズを除去して、電源ラインを安定させるために設計されています。
電力線には多くの外部ノイズが乗ることがあり、特に大電力を扱う回路ではノイズがデバイスに悪影響を及ぼします。このノイズをフィルタリングすることで、機器の誤動作を防ぎ、電源の安定性を保つことができます。
フェライトビーズ(参考)
フェライトビーズは、小型でありながら高周波ノイズを効果的に抑制するために使われるタイプのインダクタンスです。
フェライトビーズは、導線に巻きつけることで、導線を通じて伝わる高周波ノイズを吸収し、デバイス内部でのノイズ発生を最小限に抑えます。
当社のチョークコイルの設計・製造事例
プレーナー型チョークコイル
こちらはプレーナー型チョークコイルの開発事例です。
車載用プレーナー型チョークコイルですのでスペースが限られていたため、低背化構造にて設計を行っています。
低背化設計とすることでコアが広がる為、底面(筐体)との接着面が大きくなり放熱性が高い構造を実現することが可能となっています。
また、ハーネスをねじ止めすることにより大電流への耐久性を向上させています。
まとめ
チョークコイルの製作はインダクタンスの正確な調整や発熱の抑制、ノイズ対策など製作時に配慮すべき点が多くあります。
電源開発・設計ソリューションは、設計から製造までお客様の要望に合わせて一貫対応ができるだけでなく、単品小ロットから放熱性が高いチョークコイルの設計が可能です。
チョークコイルの製造でお困りの方は、電源開発・設計ソリューションにお問い合わせください。
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