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電源設計の豆知識

【スイッチング電源の設計手順】安定動作とノイズ対策の要点

スイッチング電源の設計は、単に部品を選んで回路を組むだけではありません。電源が安定して動作し、かつ外部機器に悪影響を与えず、自身もノイズによる誤動作を起こさないようにするには、フィードバック回路設計とEMI/EMC設計が重要になります。

フィードバック回路設計

基本的にフィードバック回路は、確立されているモノを使用するため、大きな変化は、無いと考えます。但し、パターン展開やフィードバックの電圧検出位置などによる回路インピーダンスが異なるため、安定性の確保部分では、入力/出力条件及び、温度環境の変化において確認を行い位相補償定数を決定する必要があります。また、位相補償定数においては、電源特性の一つである過渡応答性にも影響を及ぼしますので、過渡応答性の仕様が厳しい製品においては、注意が必要です。

フィードバック回路設計の重要性

フィードバック回路の設計は、スイッチング電源がその仕様を満たし、安定かつ安全に動作するための 生命線 と言えます。 不適切な設計は、電源の性能を著しく低下させるだけでなく、接続された機器の故障やシステム全体の不安定化に繋がる可能性があります。したがって、フィードバック回路の設計には、制御理論の知識や回路設計の経験に基づいた、慎重かつ緻密な検討が不可欠です。

設計時に注意すべきポイント

・ループ補償回路(RCフィルタ)の設計 → 位相マージン・ゲインマージンを十分にとる必要あり

・感度の高いノードの配線取り回し → グランドループやスイッチングノードの影響を避ける

・サンプリングポイントの選定 → 出力端近くで測定することでリモートセンシング効果あり

フィードバック回路の良し悪しが、スイッチング電源の「性能と信頼性の最終的な決め手」になります。

出力が安定しない・過渡応答が遅い・発振する…こうしたトラブルの多くは、フィードバック設計の見直しで解決できます。

よく使われる制御方式(例)

制御方式特徴用途例
電圧モード制御単純構造、補償設計が簡単一般的な降圧・フライバックなど
電流モード制御応答高速、過電流保護が容易中出力以上、降圧/昇圧/絶縁型など
デジタル制御柔軟性が高い、高精度高機能電源、電源モジュールなど

EMI/EMC設計

・入力フィルター (コモンモードチョーク、ディファレンシャルモードチョーク、X/Yコンデンサなど)

・フェライトビーズ(ダイオードなどに装着)

・グラウンド設計(プリント基板 (PCB) 設計に含まれる)

・配線レイアウトの最適化(プリント基板 (PCB) 設計に含まれる)

・シールド

※入力フィルターにおいては、一般的な回路の流れを意識してYキャパをFGに落とす位置により雑音端子などは、変化します。また、発振系のパターンと入力フィルターの入力側パターンがレイアウト的に近い場合、発振系パターンより直接入力側に飛び込むため、フィルターを強化しても効果が無い時もあります。電源ユニットのパワーにもよりますが、発振系パターンと入力端子側のパターンを物理的距離で8㎜程度、離す必要があります。

EMI/EMC設計の重要性

EMI/EMC設計は、スイッチング電源が他の電子機器に悪影響を与えず、自身もノイズによる誤動作を起こさずに、安全かつ安定して動作するために不可欠なものです。 法規制への適合はもちろんのこと、製品の信頼性向上、市場競争力の維持という観点からも、設計の初期段階からEMI/EMC対策を考慮することが非常に重要です。

不十分なEMI/EMC設計は、後々の手戻りやコスト増加につながるだけでなく、最悪の場合、製品の市場投入を遅らせる原因にもなります。

EMI/EMC設計が重要な理由

(1)規格適合が製品出荷の必須条件

・家電・産業機器・医療機器すべてに、EMC規格(CISPR、EN55032、FCCなど)への適合が求められる。

・規格に適合しないと、販売や輸出入ができない。

(2)他の電子機器への干渉防止(EMI)

・スイッチング動作は高周波成分を多く含むため、→ ノイズが近くの回路や通信機器に影響を与えることがある。

・特に無線機器・音響機器・計測機器では致命的な障害を起こす可能性あり。

(3)自機の誤動作防止(EMS)

・EMIは外部だけでなく自分自身にも跳ね返る。→ ノイズが制御信号に混入→ 誤動作や出力異常の原因に。

(4)再設計コストが非常に大きい

・EMI対策を後回しにすると、最終試験で不合格 → 基板の再設計、部品変更、レイアウトやケースの見直しが必要になる。

・製品開発全体の遅延・コスト増に直結。

EMI/EMC設計の具体的な対策

(1)ノイズ発生源の抑制:

・スイッチング素子のターンオン/ターンオフ速度の最適化。

・スナバ回路やフィルタ回路の導入。

・高周波特性の良い部品の選定。

(2)ノイズ伝搬経路の遮断:

・シールドケースの使用。

・グランドプレーンの適切な設計と分割。

・適切な配線パターン (短く、ループ面積を小さく)。

・ケーブルへのフェライトコアの挿入。

(3)ノイズ感受性の低減:

・フィルタ回路の強化 (入力フィルタ、出力フィルタ)。

・ノイズに強い部品や回路構成の採用。

・適切なグラウンディングとボンディング。

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今回はスイッチング電源の安定動作とノイズ対策の要点についてご紹介しました。電源開発・設計ソリューションを運営するペックでは、小ロットからカスタム電源の開発・設計を承っております。さらには、開発・設計のみならず、製造・評価まで一貫対応しており、これまで幅広いお客様のご要望を実現してまいりました。カスタム電源開発・設計に関するご依頼がございましたら、お気軽にご相談ください。

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