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電源設計の豆知識

【スイッチング電源の設計手順】主要部品の選定と基板設計のポイント

スイッチング電源の設計において、要求仕様の確認と回路方式の選定は設計の方向性を決定する重要なステップです。本コラムでは、電源の効率、サイズ、コスト、そしてEMI特性に大きく影響するスイッチング周波数の設定から、電源の安定動作を左右するトランス/インダクタ設計、そして電源の品質を物理的に決定づける主回路部品の選定とPCB設計について詳しく解説します。

スイッチング周波数の設定

スイッチング周波数の設定について、高周波にするほどトランスは小型化できますが、損失とEMI対策が必要となります。(トレードオフの関係)また、選択する回路方式や使用する制御用ICによって、スイッチング周波数がある程度決まるので、その範囲内での設定となります。

スイッチング周波数の設定の重要性

スイッチング周波数の設定は、スイッチング電源の設計において非常に重要な決定事項です。これは、電源の効率、サイズ、コスト、出力リップルノイズ、応答性、およびEMI(電磁妨害)特性に大きな影響を与えるためです。

(1) 効率に影響

・周波数が高いほどスイッチング損失(オン・オフ時の損失)が増加。

・周波数が低いほど変換効率が高まりやすいが、出力リップルが大きくなる傾向。

(2) 部品サイズに影響

・高周波化すると、必要なインダクタ・トランス・コンデンサのサイズが小さくできる。

→ 小型化・軽量化が可能。逆に低周波では大きく・重い部品が必要になる。

(3)ノイズとEMI対策に直結

・高周波はEMI(電磁ノイズ)を発生しやすくなる。

→ フィルタ回路やシールドが必要になり、設計が難しくなる。

・スイッチング周波数をEMI対策で意図的にAMラジオ帯などを避ける(150kHz~30MHz)こともある。

(4)熱設計とのバランス

・スイッチング損失が発熱の主因となるため、周波数が高すぎると温度上昇や冷却負荷が増加。

・ヒートシンクや冷却ファンの有無と併せて検討が必要。

スイッチング周波数の目安(一般的な目安)

用途・目的周波数範囲の目安
AC-DC フライバック(絶縁)65kHz ~ 130kHz
DC-DC バック(簡易・低ノイズ)100kHz ~ 500kHz
小型化重視、高密度DC-DC1MHz ~ 2MHz以上
共振型コンバータ(LLCなど)数百kHz ~ 数MHz

制御方式の選定

制御 IC の選定

・選択した回路方式に適合する制御 IC を選定。

・PWM制御/PFM制御方式/疑似共振制御方式や電圧モード、電流モード、ピーク電流モード、平均電流モードなど

の確認。

・保護機能 (OVP, OCP, UVLOなど) の確認

・ソフトスタート機能

・同期整流制御機能 (必要な場合)

・周波数設定機能

・量産を見据えての流通状況等確認。

トランス or インダクタ設計

トランスまたはインダクタ設計において、電源仕様の総出力電力より、そのパワーが取れるコアサイズを選定します。また、コアに関しては、標準的なEI、EE、PQ、EERなど色々な形状(Type)が存在するため、その中からの選択となりますが、サイズの制約などから、低背型を選定する必要があったりと注意する必要があります。また、パワーが十分とれるからと言って、小型サイズの選択の場合、安全規格 (UL, CE, PSEなど)の要求がある仕様の場合は沿面距離など物理的距離を取る必要がある事から、選択したコアサイズで問題ないかなど、考える必要があります。

トランス or インダクタ設計の重要性

トランスまたはインダクタの設計は、単なる部品選定ではなく、磁気回路の原理、材料特性、高周波特性、そして電源全体の動作を深く理解した上で行う必要のある、専門的な知識と経験が求められる重要な設計プロセスと言えます。設計が不十分な場合、他の回路設計がどんなに優れていても、スイッチング電源全体の性能を十分に引き出すことは、できません。

(1)電力変換効率に直結

・インダクタ/トランスのコア損失、銅損が全体損失の大きな割合を占める。

・設計不良(例:巻き線抵抗が大きい) → 発熱増大・効率低下 → 製品寿命の短縮。

(2)動作モード・応答性を左右する

・インダクタ値(μHやmH)が大きすぎる・小さすぎると、

→ リップル電流が増加

→ 過渡応答(応答速度)悪化

→ 制御系不安定化の原因に。

(3)絶縁・安全性に関わる(トランス)

・絶縁型トポロジでは、トランスの絶縁構造が人体保護に直結。

・医療機器・家電などでは、安全規格(UL、IEC)に適合する必要あり。

・巻線間のクリープ距離・沿面距離、絶縁紙やシールド構造などが重要。

(4)ノイズ(EMI)特性に影響

・トランス/インダクタの巻き方(分布容量、漏れインダクタンス)や材料が、→ 高周波ノイズの発生に影響。

・巻線レイアウトを工夫しないと、EMI試験で不合格になることも。

(5)小型化とのトレードオフ設計が必要

・小型化するほどコア材の選定や巻線工夫が求められる。

・無理に小型にすると飽和磁束密度超過 → 動作異常・発熱・破損のリスク。

(6)磁性材料と周波数のマッチング

・スイッチング周波数が高い設計では、コア損失の小さい材料(フェライトなど)を使う必要がある。

・周波数とコア材の適合が悪いと、無駄な発熱・損失増加になることも。

主回路部品の選定

スイッチング素子の選定

・MOSFET、IGBTなどの半導体スイッチ素子の選定。

・耐電圧、電流容量、オン抵抗、スイッチング速度、ゲート容量などを考慮。

・損失計算を行い、適切な放熱対策(放熱構造)を検討。

受動部品の選定

・コンデンサ: 電圧定格、容量値、ESR (等価直列抵抗)、ESL (等価直列インダクタンス)、リップル電流耐性などを考慮します。入力平滑、出力平滑、デカップリングなどに使用。

・抵抗: 電力定格、抵抗値、精度などを考慮します。電流検出、プルアップ/プルダウンなどに使用。

・ダイオード/整流器: 電圧定格、電流定格、順方向電圧降下、逆回復時間などを考慮。

※制御用IC回りの部品定数は、ICのアプリケーションマニュアルに基づいて算出して定数を決定したり、応用回路例の定数をベースにして動作検討時に、定数を最終的に決定。

主回路部品の選定の重要性

主回路部品の選定は、電源の基本的な性能、効率、信頼性、安全性、そしてコストを直接的に決定づける、極めて重要な工程です。

部品主な選定基準
MOSFET耐圧(VDS)、電流定格、RDS(on)、Qg、パッケージ
ダイオード耐圧、電流、VF、逆回復時間(trr)、放熱性
インダクタインダクタンス値、飽和電流、DC抵抗、コア材質
コンデンサ容量、耐電圧、ESR(等価直列抵抗)、温度耐性、寿命

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今回はスイッチング電源の主要部品の選定と基板設計のポイントについてご紹介しました。電源開発・設計ソリューションを運営するペックでは、小ロットからカスタム電源の開発・設計を承っております。さらには、開発・設計のみならず、製造・評価まで一貫対応しており、これまで幅広いお客様のご要望を実現してまいりました。カスタム電源開発・設計に関するご依頼がございましたら、お気軽にご相談ください。

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