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電源設計の豆知識

カスタム電源の開発・設計の流れ

カスタム電源の開発・設計には、安全性や信頼性、そして要求される性能を満たすために専門知識と技術が必要とされます。本記事では、カスタム電源の開発・設計がどのような流れで進んでいくのかを、各工程における重要なポイントと合わせて詳しく解説します。

流れ①:仕様の決定

カスタム電源の開発における最初の、そして最も重要なステップが「仕様の決定」です。曖昧な仕様は手戻りを生み、開発期間の長期化やコスト増加に繋がるため、慎重な検討が必要です。

下記にて仕様決定における主要な項目を列挙します。

・入力電圧範囲
・出力電圧/電流
・各種規格(安全規格)
・サイズ
・諸特性(電圧変動、出力保持時間、立ち上がり時間、出力リップル etc.)

その他にも、多岐にわたる仕様を明確化する必要があります。

流れ②:回路方式の選定

決定された仕様に基づき、最適なスイッチング電源の回路方式を選定します。回路方式によって、効率、出力特性、部品点数、コストなどが大きく異なるため、慎重な検討が必要です。回路方式の詳細については、下記資料にてご紹介していますので、よろしければご確認ください。

スイッチング電源の主な回路方式-電源開発・設計ソリューション

>>スイッチング電源の主な回路方式

流れ③:回路設計

選定した回路方式に基づき、具体的な回路設計を行います。

制御用ICの選定(※RCC方式を選定する場合は除く)

スイッチング動作を制御するためのICを選定します。制御ICの種類によって、制御方式(PWM制御、PFM制御など)、保護機能、付加機能などが異なります。仕様で要求される特性や、部品点数、コストなどを考慮して最適なICを選びます。ICの選定には、各メーカーのデータシートやアプリケーションノートが重要な情報源となります。

回路設計

選定した制御ICのアプリケーションマニュアルを閲覧の上、推奨される回路構成や部品の選定方法、注意点などを押さえ、具体的な回路図を作成していきます。シミュレーションツールなどを活用し、事前に回路の動作を確認することも有効です。

流れ④:部品選定

回路設計に基づき、実際に使用する電子部品を選定します。主要な部品としては、以下のようなものがあります。

スイッチング素子(MOSFET、IGBTなど)

スイッチング動作を担う重要な部品です。耐圧、電流容量、オン抵抗、スイッチング速度などの特性が、電源の効率や発熱に大きく影響します。

ダイオード(整流ダイオード、ショットキーバリアダイオードなど)

電流を一方向にのみ流すための部品です。順方向電圧降下や逆回復時間などの特性が重要になります。

電解コンデンサ

主に平滑回路や入力・出力の安定化に用いられます。静電容量、耐圧、ESR(等価直列抵抗)、寿命などが重要な選定ポイントです。

入力フィルター(インダクタ、コンデンサなど)

入力ラインからのノイズの侵入を防いだり、電源から発生するノイズを抑制したりするために使用されます。

その他、必要な部品(抵抗、セラミックコンデンサ、フォトカプラなど)

回路の機能を実現するために、様々な種類の抵抗やコンデンサ、絶縁が必要な箇所にはフォトカプラなどが使用されます。

部品選定においては、単に電気的な特性だけでなく、信頼性、入手性、コストなども考慮する必要があります。

流れ⑤:トランス・インダクタ設計

絶縁型電源のトランスや、ノイズ対策やエネルギー蓄積に用いられるインダクタは、専門的な知識に基づいて設計する必要があります。仕様で決定された電圧、電流、周波数などから、最適なコア材、巻数、巻線方法などを決定します。

>>トランス・コイルの開発・設計の流れ

流れ⑥:基板設計(パターン設計)

回路図に基づいて、基板設計を行います。基板のパターン設計は、電源の性能や信頼性に大きな影響を与えるため、以下の点に注意が必要です。

安全規格対策(沿面距離)

安全規格で定められた沿面距離(部品端子間やパターン間の距離)を確保することで、絶縁不良による事故を防ぎます。高電圧を取り扱う箇所では特に注意が必要です。

ノイズ対策(パターン設計の最適化)

スイッチング動作に伴うノイズは、他の電子機器への影響や電源自身の誤動作を引き起こす可能性があります。適切なグラウンド設計、配線長の短縮、シールドパターンの配置など、ノイズ対策を考慮したパターン設計が重要です。

>>ループ回路面積の最小化によるスイッチングノイズ対策

発熱対策(電流量に適したパターン幅の確保)

大電流が流れるパターンは、適切な幅を持たせることで抵抗を減らし、発熱を抑制します。パターン幅が不足すると、発熱による部品の劣化や基板の損傷に繋がる可能性があります。

流れ⑦:試作・評価・検討

設計が完了したら、実際に試作品を製作し、仕様で要求された性能を満たしているか、安全規格に適合しているかなどを評価・検討します。

評価項目としては、出力電圧の安定性、リップルノイズ、効率、温度特性、保護機能の動作、雑音端子/不要輻射等のノイズなどが挙げられます。各種測定器を用いて詳細なデータを取得し、設計の妥当性を検証します。

もし、評価の結果、目標とする性能を満たしていない場合は、回路設計や部品選定、基板設計などを見直し、改善策を検討します。この試作と評価のサイクルを繰り返すことで、より完成度の高いスイッチング電源へと近づけていきます。

流れ⑧: 完成・量産へ

試作と評価を繰り返し、全ての要求事項を満たすことが確認できれば、いよいよ完成となります。量産に向けて、部品調達先の選定、製造プロセスの確立、品質管理体制の構築などを行います。

カスタム電源の開発・設計のことなら、電源開発・設計ソリューションにお任せください!

いかがでしたでしょうか。今回は、カスタム電源の開発・設計の流れをご紹介しました。電源開発・設計ソリューションを運営するペックでは、小ロットからカスタム電源の開発・設計を承っております。さらには、開発・設計のみならず、製造・評価まで一貫対応しており、これまで幅広いお客様のご要望を実現してまいりました。カスタム電源開発・設計に関するご依頼がございましたら、お気軽にご相談ください。

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