セミカスタム電源を活用すべきケースとは?
製品開発において、電源は重要な基幹部品です。しかし、開発現場では「標準電源では要求仕様を満たせないが、フルカスタムで新規開発するほど複雑な要件ではない」という状況に直面することがあります。このような状況で有用な選択肢となるのが「セミカスタム電源」です。
セミカスタム電源とは、既存の標準電源をベースに、出力電圧の変更、特殊コネクタの追加、外形寸法の調整など、必要な部分のみをカスタマイズする開発手法を指します。今回は、セミカスタム電源の活用が特に有効となる3つのケースを解説します。
ケース①:標準電源では要件を満たせないが、フルカスタムほどの複雑な要件ではない場合
製品の要求仕様が、標準電源のラインナップからわずかに外れている、というのはよくある状況です。「出力電圧をあと0.5Vだけ上げたい」「特定の形状のコネクタを使用したい」「筐体の高さに合わせ、コンデンサの高さを抑えたい」といったケースがその典型です。
このような「あと一歩」の要求を満たすために、ゼロから設計するフルカスタム電源を選ぶのは、過剰な投資となる可能性があります。セミカスタム電源であれば、実績ある標準電源を基盤とし、必要な箇所のみを的確に変更できます。これにより、要求仕様、コスト、信頼性においてバランスの取れた最適な設計・開発が実現可能です。
ケース②:厳しいコスト・開発予算の制約がある場合
フルカスタム電源の開発には、設計、試作、評価、各種安全規格の認証取得などに多額の初期費用が必要です。そのため、製品の目標価格が厳しい場合や、開発予算が限られている場合には、フルカスタム化が現実的でないことも少なくありません。
セミカスタム電源は、ベースとなる標準電電源を活用することで、この初期費用を大幅に削減できます。さらに、設計期間の短縮や、主要部品の共通化による量産単価の抑制も期待できるため、厳しいコスト制約下でカスタム仕様を実現するための、極めて有用な解決策となります。
ケース③:市場投入までの時間を最優先したい場合
競争の激しい市場において、製品をいかに早く投入できるかは、ビジネスの成否を分ける重要な要素です。新規開発製品で、この市場投入までの時間短縮を最優先する場合、セミカスタム電源は極めて有効な手段となります。
フルカスタム電源では、設計から評価、認証取得までの一連のプロセスに1年以上の期間を要することも珍しくありません。一方、セミカスタム電源は、ベースモデルがすでに出来上がっているため、開発期間を大幅に短縮できます。この開発スピードの差が、市場投入において大きなアドバンテージとなります。
セミカスタム電源活用上の注意点
利便性の高いセミカスタム電源ですが、活用する上での注意点もあります。それは、ベースとなる標準電源のメーカーと、セミカスタム電源開発メーカーとの間で、責任の所在が曖昧になる可能性がある点です。
万が一、市場で不具合が発生した際に、その原因がベース部分にあるのか、カスタマイズ部分に起因するのか、切り分けが困難になるケースが想定されます。
(※ただし、当社ではこのような事態を避けるため、開発の初期段階で標準電源メーカーと綿密に協議し、仕様の取り決め、評価・検証の分担、保証範囲などを明確化して、お客様を全面的にサポートします。)
当社の電源開発・設計事例

こちらは、海外電源メーカーの標準ACアダプタの中身(オンボード)を使用したオンボード電源です。標準品のACアダプタの基板をそのまま使用するため、入出力の接続は、PINを挿入し、お客様の基板に実装しています。
カスタム電源の開発・設計のことなら、電源開発・設計ソリューションにお任せください!
今回は、「セミカスタム電源を活用すべきケースとは?」についてご紹介いたしました。電源開発・設計ソリューションを運営するペックでは、お客様の細やかなご要望にお応えするカスタム電源開発を得意としております。設計から製造、評価まで責任をもって一貫対応し、小ロットの案件にも柔軟に対応いたします。豊富な実績を活かし、最適な電源をご提案させていただきますので、どのようなことでもお気軽にお問い合わせください!
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