【ノイズ対策に有効】コモンモードチョークコイルの動作原理から設計ポイント
コモンモードチョークコイルは通常の信号電流とノイズ電流に対して異なる効果を発揮し、ノイズのみを効果的に除去できる特性を持ちます。本記事では、コモンモードチョークコイルの動作原理から設計ポイントについてご紹介します。
コモンモードチョークコイルの動作原理
コモンモードチョークコイルは、一つのコアに巻かれた二つのコイルが特徴です。この構造により、通常の信号電流とノイズ電流に対して異なる効果を発揮し、電力供給に影響を与えずにノイズのみを効果的に抑制します。
このノイズの種類は主に、ノーマルモード(ディファレンシャルモード)とコモンモードの2種類に分けられます。
ノーマルモード(ディファレンシャルモード)ノイズとは、電源のプラス側からマイナス側へ電流が流れ、その後ノイズの発生源へ戻る経路で発生するタイプのノイズです。
一方、コモンモードノイズは、電源のプラス側・マイナス側のどちらにも同じ位相のノイズが乗り、同じ方向へ流れていくノイズを指します。
コモンモードチョークコイルの特徴
ノイズの選択的打ち消し
上記の動作原理により、コモンモードチョークコイルは機器の動作に必要な電流には影響を与えず、コイル・ノイズ対策としてノイズのみを効果的に除去します。
一般的に、周波数の高い信号が伝送されると、フィルタなどで分離しきれずにノイズが発生することがありますが、コモンモードチョークコイルは選択的にノイズ除去が可能です。これにより、電子回路の信号品質や機器動作安全性を維持する効果が高まります。
ラインインピーダンスの平衡化
コモンモードチョークコイルは、ACラインとアース間の不平衡インピーダンスを整える役割を持ちます。不平衡な状態ではノイズが発生しやすくなりますが、コモンモードチョークコイルを用いることで不平衡なインピーダンスを整え、ノイズが発生しにくい安定した状態を作り出します。
コア形状の比較
トロイダルコア
トロイダルコアは環状形状のコアで、漏れ磁束が少ない特性を持ちます。また、高効率のノイズ抑制が可能です。
UU形状
UU形状コアは、UU字型のコアを組み合わせた形状をしており、比較的コアのサイズの選択の幅が広く、巻線空間を大きく確保できる特徴を持ちます。
設計上の重要ポイント
高性能なノイズフィルタを設計するには、インダクタンス値だけでなく、周波数特性や浮遊容量といった要素を総合的に考慮する必要があります。
インピーダンス周波数特性
ノイズ対策の効果は、対象周波数帯でのインピーダンスの高さで決まります。しかし、高周波域では浮遊容量の影響でインピーダンスが低下し、フィルタ性能が劣化します。そのため、求める帯域へ最適化する必要があります。
浮遊容量の影響
巻き線間に存在する浮遊容量は、高周波ノイズのバイパス経路となり、フィルタ効果を著しく低下させます。巻き数や巻き方を工夫することで最小限に抑えることが重要です。
コア材質
コアの材質は主材料として、高い透磁率を持つコア(一般的なフェライト系のコア)が使用されます。これにより、少ない巻き数で大きなインダクタンスを効率的に得ることができます。
多段フィルタ構成
広帯域のノイズに対処するためは、特性の異なるコイルを直列に接続する多段構成が有効です。これにより、各コイルがそれぞれの得意な周波数帯で性能を発揮します。また、二段や三段構成とすることで単段では不足する帯域も抑制できます。
コイルのノイズ対策は電源開発・設計ソリューションにお任せください
いかがでしょうか。今回は、コモンモードチョークコイルの動作原理から設計ポイントについてご紹介しました。電源開発・設計ソリューションを運営するペック株式会社では、お客様の用途、お悩み事に適した最適なトランス、コイルの設計・製造を請け負います。お困りの方はお気軽に当社にご連絡ください。
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