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電源設計の豆知識

カスタム電源における雑音端子電圧の対策

1. 伝導ノイズの2つの成分を見極める

対策を練る前に、測定されたノイズがどちらのモードか推測することが重要です。

  • ノーマルモード(ディファレンシャルモード): 電源線間を流れるノイズ。主に低周波数帯(数MHz以下)で目立ちます。
  • コモンモード: 電源線と大地(GND)の間を流れるノイズ。主に高周波数帯(数MHz以上)で支配的になります。

2. 回路構成別の具体的対策

① 入力フィルタ(EMIフィルタ)の強化

スイッチング電源の入り口でノイズをブロックします。

② スイッチング素子(FET/ダイオード)周り

ノイズの「発生源」を叩く手法です。

  • ゲート抵抗の調整: スイッチングの立ち上がり・立ち下がりを緩やかにします。
    ※トレードオフの関係が存在し、損失が増えて発熱しやすくなるため、効率とのバランスが肝心です。
  • スナバ回路(RC / RCD): スイッチング時の「リンギング(振動)」を吸収します。
    ドレイン・ソース間に配置するのが一般的です。
  • ファストリカバリダイオードの採用: 出力整流側のダイオードのリカバリ特性が悪いと大きなスパイクが出ます。
    低ノイズなSiC-SBDなどへの変更も検討材料です。

③ プリント基板パターン(ループ面積を最小化)

ノイズは「ループ面積」に比例します。

  • 大電流ループを最小化: 入力コンデンサ〜トランス〜FETのラインは、できるだけ短く、太く、面積を小さくレイアウトします。
  • フィルタ部品を離さない: 入力コネクタのすぐそばにフィルタを置きます。
    フィルタを通った後の配線と、通る前の配線が並行して走ると、ノイズが飛び移るので注意です。
  • ヒートシンクの接地: FETを取り付けるヒートシンクは大きなアンテナになりがちです。
    浮かせずに、適切な電位(通常は入力側のマイナスライン)に接地します。

④ トランスの構造対策

トランスは一次側と二次側の間でコモンモードノイズを橋渡ししてしまいます。

  • シールド巻線(ショートリング): 一次巻線と二次巻線の間に銅箔(シールド層)を入れ、一次側の静止電位(GNDなど)に接続することで、容量結合によるノイズ移り抑制します。

⑤ Yコンデンサ

  • ライン-GND間(コモンモード抑制)
  • Yコンデンサ(一次ー二次跨ぎ): 一次側のGNDと二次側のGNDを数千pFのコンデンサで結び、ノイズを一次側に送り返します(絶縁耐圧に注意)。

3. 対策の切り分け

現象疑うべき箇所対策案
150kHz〜1MHz付近でNGノーマルモードノイズXコンデンサの増量、チョークのインダクタンスUP
5MHz〜30MHz付近でNGコモンモードノイズYコンデンサの追加、コモンモードチョークの改善
特定の周波数に鋭いピークスイッチングのリンギングスナバ回路の定数調整、ゲート抵抗の変更

具体例として、次の測定波形をベースに説明を行います。

◆測定波形例

カスタム電源における雑音端子電圧の対策 | 電源開発・設計ソリューション

① 150kHz〜1MHz付近

入力フィルター回路が支配的である帯域のため、ラインフィルターと言われるコイルとXコン(フィルムコンデンサ)の構成でノイズを基本抑えることになります。

② 800kHz〜6MHz付近

入力フィルター回路内のYキャパをFG(フレームグランド)に落とす位置により変化するため、帯域のノイズを下げる場合、YキャパのFGに落とす位置を変更したり、容量を変化させて、効果を確認して判断します。

但し、基板変更を伴うため検討においては、パターンの引き回しも想像しながら対応を行う必要があります。また、容量を上げると漏れ電流が増えますので、安全規格品や準拠品の場合、漏れ電流に対する注意も必要となります。

※Yキャパにアースインダクター(フェライトビーズ含む)を挿入する場合もあります。

③ 5MH〜30MHz付近

Yキャパでも整流平滑後の1次側GNDと2次側GNDを接続する位置や、2次側GNDとFG(フレームグランド)が共通でない場合は、その間にもコンデンサを挿入しますが、その位置によりノイズの出方が変化するため注意が必要です。

あとは、スナバ回路の定数調整、ゲート抵抗の変更、2次側出力整流側のダイオードのリカバリ特性を確認しながら対応します。

4. 回路方式別、注意点

(1)フライバック方式

トランスにエネルギーを蓄えるため漏れインダクタンスによるサージが最大の問題になります。

① ノイズの特徴

スイッチングOFF時の高電圧スパイクとリンギング。

② 個別対策

  • クランプ回路(DCR)の最適化: 一次側FETのドレインに出るサージを抑えるため、RCDクランプの抵抗とコンデンサを調整します。
  • トランスの結合度向上: 漏れインダクタンスがノイズの源なので、サンドイッチ巻き(一次-二次-一次)で結合を密にします。
  • 二次側ダイオードのサージ対策: 二次側整流ダイオードにもRCスナバを追加します。
  • Yコンデンサ調整(コモンモード対策): 一次−二次間の容量バランスを取る。位置と容量が重要。
  • トランス巻線構造改善: 一次二次の重ね方を最適化(サンドイッチ巻等)、シールド巻線追加。トランスでEMIは大きく変わる。

(2)フォワード方式

フライバックと異なり、スイッチングON時にエネルギーを伝達するため、リカバリ電流によるノイズが目立ちます。

① ノイズの特徴

ON/OFF両方のタイミングでノイズが出る。特に転流ダイオードのリカバリ。

② 個別対策

  • 転流ダイオードの選定: 出力側の整流用・転流用ダイオードに、リカバリの速い(またはソフトリカバリ特性の)ダイオードを採用します。
  • パワーインダクタの検討: 二次側チョークコイルからの放射ノイズが入力側に回り込むことがあるため、閉磁路構造のコアを使用します。
  • リセット巻線の処理: 磁束リセット用の回路から出る高周波成分を抑えるため、配線を短くまとめます。

(3)LLC共振方式

高効率で低ノイズな方式ですが、周波数制御(PFM)であるため、ノイズ対策が複雑になることがあります。

① ノイズの特徴

基本はソフトスイッチング(ZVS)なのでノイズは少なめ。ただし、軽負荷時や起動時のハードスイッチング、または出力側の高周波リップルが原因になります。

② 個別対策

  • レイアウト最優先: ハーフブリッジループの最短化、共振タンク最短化。
  • 共振インダクタの漏れ磁束: 外付け共振インダクタやトランスの漏れ磁束が金属筐体にエディ電流(渦電流)を発生させ、それがノイズとして回ることがあります。配置に注意が必要です。
  • 二次側同期整流のタイミング: MOSFETで同期整流している場合、ON/OFFのタイミングがズレると急峻な電流変化が起き、コモンモードノイズを叩き出します。
  • 高周波リップルフィルタ: LLCは電流がサイン波状ですが、周波数が高いため、出力コンデンサに低ESR品を使い、必要に応じてL型の二次フィルタを追加します。

(4)共通して効果が高い「定石」

どの方式でも、最終的に雑音端子電圧の規格(150kHz〜30MHz)を通すには以下が不可欠です。

  • Yコンデンサによる還流: 一次側と二次側のGND間をYコンで結び、二次側に突き抜けたノイズを一次側(ノイズ源)へ戻すルートを作ります。
  • シールド・巻線技術: トランスの一次・二次間にシールド(銅箔)を入れ、電位の安定した場所に落とすのが最もコモンモードに効きます。

5. 雑音端子の勘所

「雑音端子電圧の勘所」は、理屈より“どこを見るか”が8割です。

① 低域(〜数MHz)は「Xコン」、高域(〜30MHz)は「Yコン」

周波数特性によって、真っ先に疑うべきパーツが決まっています。

  • 150kHz〜1MHz付近: 主にノーマルモード。
    勘所: 入力コンデンサ(Xコン)の容量を増やすか、ラインフィルタのインダクタンスを上げます。
  • 5MHz〜30MHz付近: 主にコモンモード。
    勘所: Yコンデンサの追加、またはコモンモードチョークの巻き方(寄生容量を減らす)を検討します。

② トランスの「結合」と「シールド」

トランスはノイズの最大の「結合場所」です。

勘所: 一次側のスイッチング電位が激しく動く箇所(ドレインなど)と、二次側の配線が物理的に近いだけでノイズが飛び移ります。

魔法の銅箔: トランスの層間にシールド(ショートリングではなく、電位を固定した銅箔)を入れるだけで、コモンモードノイズが劇的に(10〜20dB)下がることがよくあります。

③ 「最短距離」は正義、でも「並走」は悪

基板レイアウトにおける勘所です。

勘所: フィルタを通した後の「クリーンな線」と、スイッチング素子に近い「汚れた線」が数ミリ並走しているだけで、フィルタをバイパスしてノイズが漏れ出します。

配置の鉄則: 入力コネクタ → フィルタ → スイッチング回路 という「一方向の流れ」を徹底し、入り口と出口を物理的に引き離してください。

④ 放熱板(ヒートシンク)を「アンテナ」にしない

FETをヒートシンクに取り付ける際、絶縁シートを挟みますが、そこには数〜数十pFの寄生容量が生じます。

勘所: この容量を介して、ヒートシンクが大音量でノイズを放射するアンテナになります。

対策のツボ: ヒートシンクを「浮かせない」こと。一次側の安定した電位(入力コンデンサのマイナス側など)に落とすことで、ノイズを回路内に閉じ込めます。

⑤ 「急峻さ」を少しだけ捨てる

効率を求めすぎてスイッチング速度を速くしすぎると、高周波ノイズが爆発します。

勘所: ゲート抵を少し大きくして、波形の立ち上がりを「ほんの少しだけ」寝かせます。

効果: 効率が1%落ちるかもしれませんが、ノイズ対策パーツを山盛り追加するコストとスペースを考えれば、こちらの方が賢い選択になるケースが多いです。

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