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電源設計の豆知識

カスタム電源開発・設計における冷却方式の選定ポイント

カスタム電源の仕様検討において、「静かな自然空冷にしたい」「小型化のためにファンを付けたい」といったご要望は頻繁に挙がります。しかし、その選択は単なる「好み」や「機能の有無」だけで決めてよいものではありません。電源は発熱部品の集合体であり、冷却方式の選択は製品の「信頼性」「寿命」「サイズ」「コスト」に直結する極めて重要な設計要素です。

今回は、主要な4つの冷却方式の特徴について整理し、仕様策定時に考慮すべき判断ポイントを解説します。

代表的な4つの冷却方式と特徴

電源設計において主に検討される方式は、以下の4つに分類されます。それぞれの特徴についてご紹介いたします。

方式①:自然空冷方式

自然空冷方式は、ファンなどの可動部を一切使用せず、空気の自然な対流によって放熱する最も一般的な冷却方式です。動作音が発生せず、構造もシンプルなため故障リスクが低く、メンテナンスフリーで高い信頼性を確保できます。一方、放熱面積を確保する必要があるため、筐体が大きくなりやすいという課題もあります。

方式②:強制空冷方式

強制空冷方式は、ファンを用いて空気を積極的に流し込むことで、効率的に熱を逃がす冷却方式です。発熱量の大きい電源でも十分な冷却性能を確保できるため、小型化・高密度化に有利です。ただし、ファンには寿命があり定期的な交換が必要となるほか、動作音やメンテナンスを考慮した設計が欠かせません。

方式③:液冷方式

液冷方式は、冷却水などの冷媒を循環させて熱を効率的に吸収・排出する高性能な冷却方式です。高熱密度環境や高温下でも安定した冷却が可能で、極めて高い放熱性能を求められる用途に適しています。一方で、システム構成が複雑になりコストも上昇するため、採用は限定的です。

方式④:熱電冷却方式

ペルチェ素子(熱電素子)を用いた熱電冷却方式は、電流を流すことで素子の一方の面から熱を吸収し、反対側へ移動させる「ペルチェ効果」を利用した技術です。冷媒を必要とせず固体素子のみで冷却できるため、小型化や静音性、高精度な温度制御に優れ、電流の方向を切り替えることで加熱にも対応できます。

ただし、移動した熱を効率よく外部へ逃がす必要があるため、実際の機器ではヒートシンクやファンなどの放熱機構を併用することが一般的です。さらに、一般的な空冷方式に比べて電力効率が低いため、大容量の冷却には向きません。

最適な冷却方式を選ぶためのポイント

電源設計における冷却方式の選定は、単なる温度管理にとどまらず、製品の信頼性・サイズ・コスト・運用性にまで大きな影響を与える重要な要素です。用途や設置環境によって最適な方式は異なり、どれか一つの指標だけで安易に決めてしまうと、想定外のトラブルや追加コストの発生につながることもあります。

そのため、以下の4つのポイントをバランス良く検討し、最適な冷却方式を選択することが求められます。

ポイント①:熱設計の成立性

要求される出力(発熱量)に対して、十分な放熱性能を確保できるかが最優先の判断基準となります。冷却能力が不足すると、部品劣化・寿命短縮・誤動作などにつながるため、許容温度範囲内に収められる設計が不可欠です。

ポイント②:製品サイズ(スペース制約)

限られたスペースで高出力を実現する必要がある場合には、効率よく放熱できる強制空冷方式が有力です。一方、筐体に余裕がある場合は、放熱面積を広く確保しやすい自然空冷方式も選択肢に入ります。

ポイント③:ライフサイクルコスト(寿命・保守性)

ファンには寿命があり、定期交換や保守対応が必要となるため、交換性の設計を含めた信頼性評価が重要です。24時間稼働の設備やメンテナンスが制限される市場では、可動部がなく信頼性の高い冷却方式が好まれます。

ポイント④:静音性の要求レベル

医療現場や静音が求められるオフィス機器など、騒音が許容されない環境では、ファンを使用しない自然空冷方式が適しているケースがあります。騒音規定の有無や機器の設置場所(人が近いかどうか)によって、方式選定が大きく左右されます。

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いかがでしたでしょうか。今回は、カスタム電源設計における冷却方式の選定ポイントについてご紹介しました。冷却方式の選定は、単なる「ファンの有無」を決める作業ではなく、運用環境や寿命要件から逆算する重要な技術判断です。安易な選択は将来的なトラブルの原因となるため、設計初期からの戦略的な検討が欠かせません。

電源開発・設計ソリューションを運営する「ペック」では、こうした熱設計を含めたカスタム電源の開発を、小ロットから承っております。設計のみならず、製造・評価までの一貫対応で、お客様の多様なご要望を実現いたします。仕様策定や熱対策でお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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