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電源設計
提案事例

LED電源ユニットにおけるチラつき現象の解析と対策

お客様の要望・課題

開発中のLED照明用電源ユニットを、LED負荷(3W 5並列回路、約15W)に接続して動作させると『ちらつき』が発生しており、それを改善したいとの課題がございました。

提案内容・効果

①:実機による現象確認

課題を解決するため、まず実機を用いて現象の確認を行いました。

①状態確認

LED電源ユニットにおけるチラつき現象の解析と対策 | 電源開発・設計ソリューションLED電源ユニットにおけるチラつき現象の解析と対策 | 電源開発・設計ソリューション

   VLED、ILEDの波形に振られあり。        DC390Vの振れと同期している。

②モデル比較

LED電源ユニットにおけるチラつき現象の解析と対策 | 電源開発・設計ソリューションLED電源ユニットにおけるチラつき現象の解析と対策 | 電源開発・設計ソリューション

     ちらつき問題のモデル           ちらつき問題の無いモデル

    ILED ripple 成分 約 16mA           ILED ripple 成分 約 16mA

②:調査内容

リップル電流の変化が、回路内のどの動作(PFC及びLLC等)の影響を受けているか調査を行いました。

LED電源ユニットにおけるチラつき現象の解析と対策 | 電源開発・設計ソリューション

結果、上記の波形のとおり、PFCの発振とILEDリップル電流の動作がリンクしている事を確認しました。

PFCの動作は、軽負荷時におけるバーストモードでの動作でした。これはICの制御上は問題ない動作ですが、これがちらつきの原因であると考えられます。

対応策として

問題の動作は、軽負荷時の損失を改善するため、制御用ICがバーストモードで動作した結果でした。 これはICの特性上の動作ですが、バーストモードと連続発振モードとの切り替わりポイントを調整できれば、ちらつきの問題は解消されると考えました。

PFC制御用ICの動作の確認

バーストモードへの移行について、ICのアプリケーションマニュアルおよびデータシートを確認しました。

使用されている制御用ICは、負荷が徐々に減少するとCRM(臨界モード)で動作し、周波数が上昇して損失が増加する特性があります。しかし、このICは損失が増えないよう、周波数が一定以上に上がらないようにデッドタイムが設定されています。これにより、動作モードをDCM(不連続モード)に移行させ、軽負荷時の効率悪化を防ぐ制御動作となっていました。

ICのマニュアルには、『特定の負荷でバーストモードに入り、軽負荷時の効率とスタンバイ電力損失を改善します。』と記載がありましたが、この『特定の負荷』が定格負荷の何%程度に相当するかについては触れられていませんでした。 動作移行の判断は、IC内部で行われている状態でした。

③:対策について

本製品はフリー入力(AC100-240V)対応ではなくAC100V専用であるため、AC200Vでの動作は考慮する必要がありません。この仕様を利用し、動作領域を低圧側に降ることで軽負荷時の一連の動作のタイミングを変化させ、バーストモードへの移行タイミングを変更できないか検討しました。

ICのアプリケーションマニュアル / データシートによると、入力の波形をモニターしている端子のピーク電圧が、IC内部で規定されている電圧(通常1V)を超えると、ICがソフトスタートアップでスイッチングを開始するとの記述がありました。

その算出式に基づくと、現状はAC85V(DC120V)の設定であったため、この開始電圧を下げる方向で定数を調整しました。

 設定抵抗値:180KΩ → 330KΩに変更

④:対策検証結果

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問題の製品に対し、「③:対策について」項で決定した設定抵抗値に変更し、LED負荷での動作を確認しました。その結果、上記の波形の通りバーストモードへの移行タイミングを変更することができ、LEDの電流リップルも安定し、ちらつきは解消されました。 目視によるチラつきも全くない状況となりました。

負荷がどの程度まで減るとちらつきが再発するかを確認しました(製品の余裕度確認)。

・LED負荷を15Wから12Wに変更しても問題はありませんでした。

・LED負荷を9Wまで下げた場合、バーストモードへ移行しましたが、バースト間隔(発振状態と停止状態の間隔)において発振状態が70%程度維持されるため、肉眼によるちらつきは確認できませんでした。

その他、確認事項として、入力電圧をモニターしている端子にかかる電圧が、定数変更により高くなるため、あらゆる仕様条件において問題ないかを確認する必要がありました。 ICマニュアルで確認した結果、その端子の絶対最大定格は+6Vであり、アプリケーションマニュアルでは3.38Vまでの使用が推奨されていました。

設定抵抗を変更した場合、最大入力電圧であるAC115Vを印加した時でも端子電圧は2.59Vとなり、推奨電圧値に対してもマージンがあることが確認できました。 計算上では、入力がAC150Vに達して初めて3.38Vとなるため、余裕度は十分にあると判断しました。

⑤:設計の際に重要なポイント

各ICメーカーは、データシート以外にアプリケーションマニュアル等の資料も用意しています。そこには設計具体例として、重要な定数の計算式や、回路図および全ての定数が記載されていることが多いです。 しかし、その回路設計の仕様は一般的なものであり、あくまでも参考例です。 実際の製品仕様で動作させた場合、参考例では問題とならなかった動作モードが発生する場合があります。

設計者として重要なのは、まず自分達の製品仕様をしっかりと把握した上で設計にあたることです。次に、使用するICに関して、各端子の役割を確認し、内部ブロック図からどのような流れで制御されているかを理解することです。 最後に、データシートで各端子の絶対最大定格を確認します。さらに、データシートに記載されている数値がどのような条件で測定されたものか(測定条件)を把握した上で、自分達の製品の動作状態時に、ICの各端子がその条件値(推奨値など)の近くで動作するように定数を調整すれば、より安定した動作に繋がります。

また、ICの制御部分が関係する問題であれば、ICメーカーへ確認することも必要です。 今回の事例においても、バーストモードへの移行タイミングについて、ICメーカーへ問い合わせるのも一つの有効な方法でした。そのICのエキスパートに聞くことで、より簡単に対策できる場合もあるからです。

昨今の制御ICは、制御が内部で完結していることも多く、問題に対して外部定数や追加回路などで工夫しても、対策しきれないことがあります。 そのような場合は、ICメーカーに問い合わせて、他に手段が無いか相談します。 結果としてIC自体の変更を提案されることも多いですが、稀に、こちらが考えもしなかった対策方法が見つかる場合もあります。 そうした新たな知見を知識として蓄積していくことも重要だと考えます。

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