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電源設計の豆知識

カスタム電源におけるフェイルセーフを実現する保護回路の動作特性

カスタム電源の設計では、効率・コスト・サイズといった基本仕様と並び、フェイルセーフ設計は欠かせない要素です。特に産業機器、通信機器、医療機器など、突然な停止や誤動作が重大な影響を及ぼすシステムでは、異常発生時の動作制御設計が品質を大きく左右します。今回は「カスタム電源におけるフェイルセーフを実現する保護回路の動作特性」についてご紹介します。

過電流保護回路(OCP)

過電流保護回路(OCP)は、全ての電源に搭載される基本的な保護機能です。出力電流が設定値を超えた場合に、電源内部のスイッチング素子など電子デバイスの保護及び部品の異常発熱や負荷デバイスを守る役割を果たします。

OCPの代表的な動作特性をご紹介します。

1.自動復帰型

動作特性①:定電流制限型

出力電流が設定値に達すると、それ以上の電流を流さないよう制限する方式です。このとき、電流を制限するために出力電圧が低下します。

軽度の過負荷や突入電流に対しても電源を遮断せず動作を継続できるため、電源の安定性を保ちやすいのが特徴です。ただし、過負荷や短絡状態が長時間続くと内部素子の発熱が増大するため、場合によっては、サーマル保護など他の保護回路との併用が望まれます。

動作特性②:フの字特性型

出力電流が設定値に達して出力電圧が低下し始めると、それに合わせて出力電流の制限値も低下させる方式です。

この方式の最大の利点は、短絡(ショート)時などに出力電圧が大きく低下した場合、流れる電流値も小さく抑えられる点です。これにより、定電流制限型よりも内部素子の発熱を大幅に低減でき、より安全性の高い保護が可能になります。ただし、電源の負荷側にモーターや大容量コンデンサのように、起動時に大きな突入電流を必要とする負荷を接続する場合、その突入電流で保護が作動してしまい、正常に立ち上がらない可能性があるため注意が必要です。

動作特性③:間欠特性型

間欠特性型は、近年多くのスイッチング電源用制御ICで標準的に採用されている保護方式です。過電流を検知すると即座に出力を停止し、一定時間経過後に自動で再起動を試みる動作を繰り返すのが特徴です。この方式は、停止時間を長く確保することで異常時の平均電力を大幅に抑制できるため、電源内部や配線の発熱・焼損リスクを最小限に抑えられる点が最大のメリットです。

ただし、モーターなどの起動電流が大きい負荷の場合、その電流を異常と誤検知してしまい、再起動と停止を繰り返して電源が立ち上がらない場合があるため、負荷特性との適合性には注意が必要です。

2.ラッチ型

出力電流が設定値を超えると、電源出力を強制的に停止する方式です。短絡(ショート)などの重大な異常時に有効で、電源内部のスイッチング素子など電子デバイスの保護及び負荷デバイスを迅速に保護できます。停止後に再起動するには、手動リセットや自動復帰(オートリスタート)などの復帰条件を設計する必要があります。

フェイルセーフ設計の観点では、「異常検出 → 停止 → 再起動」というシーケンスを明確に定義することが重要です。特に、過電流状態が解除された後に一定時間入力源をOFFしてから自動復帰させるオートリスタート方式を採用すると、連続的なオン・オフ振動(チャタリング)を防ぎ、より安定した動作が実現できます。

過電圧保護回路(OVP)

過電圧保護回路(OVP)は、電源の出力電圧が何らかの異常によって設定値を超えた場合に、電源内部の回路や、特に電圧に敏感な負荷デバイス(ICなど)を損傷から守るための重要な保護機能です。ただし、コストやスペースの制約から省略されることもあり、その場合は「どの異常を想定して保護するのか」を設計段階で明確に定義することが求められます。

OVPの代表的な動作特性には、大きく分けて下記の二つがあります。

動作特性①:ラッチ型

出力電圧が設定値(過電圧検出点)を超えると、電源出力を強制的に停止(ラッチ)する方式です。電源の制御ICの故障など、重大な異常による電圧上昇時に有効で、負荷デバイスを迅速かつ確実に保護できます。過電圧が発生する状況は、電源制御が外れた状態が多く、大半の場合、電源回路内に異常をきたしていることが、大いにあります。

動作特性②:クランプ型

出力電圧が設定値に達すると、ツェナーダイオードや専用のシャントレギュレータなどの素子が動作し、過剰なエネルギーをGND(グラウンド)などに流す(シャントする)ことで、出力電圧がそれ以上上昇しないよう抑え込む(クランプ)方式です。

この方式の利点は、電源出力を停止させることなく、一時的な電圧サージなどから負荷を保護できる点です。ただし、過剰なエネルギーはクランプ素子で熱として消費されます。過電圧状態が長時間続くと素子の発熱が増大し、素子自身を破損(ショート)させて過電流保護を働かせて負荷デバイスを保護する手法となります。

素子自身がショートモードで潰れる事を前提としており、素子自身がオープンモードでの破損の可能性がある場合は、この方式は使用できません。いじわる試験など検証が重要になります。

サーマル保護回路(OTP)

サーマル保護回路(OTP)は、電源内部の温度が異常に上昇した際に、パワートランジスタ・FET・パワーダイオードなどの主要な半導体素子を熱による損傷や破壊から守るための保護機能です。

サーマル保護回路は、内部素子が「電気的な異常(過電流など)」を監視する過電流保護とは異なり、「熱」という物理的な結果を監視します。そのため、過電流保護などが作動しない緩やかな過負荷状態や放熱条件が不十分な場合には、発熱し、サーマル保護回路にて保護を行います。

最も一般的な動作特性は、内部温度が設定値(過熱検出点)に達した時点で、電源の動作(スイッチングなど)を強制的に停止する方式です。これにより、熱の発生源となる素子の動作を止め、さらなる温度上昇を防止します。

当社の電源開発・設計事例

カスタム電源におけるフェイルセーフを実現する保護回路の動作特性 | 電源開発・設計ソリューション

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